地方公共団体における監査制度
地方公共団体の行政は、住民からの税金を主な財源にして運営されており、その事務を処理するに当たっては住民の福祉の増進に努め、最少の経費で最大の効果を挙げるとともに、その組織及び運営の合理化に努め、その規模の適正化を図らなければなりません。行政が公正で合理的かつ効率的に行われているかどうかについて、住民は知る権利を持っているとともに監視することが必要です。
しかし、住民が地方公共団体の事務の執行に対し、日常的に批判や監視をすることは困難であることから、住民に代わって、監査委員が監査を行うという制度が「監査委員制度」であり、外部監査人が監査を行うという制度が「外部監査制度」です。
監査委員制度とは
査委員は、都道府県や市町村などの地方公共団体の機関(執行機関)のひとつです。監査委員は、知事等の指揮監督に服さず、独立した立場で、地方公共団体の行財政が法令に準拠して適正に行われているか、また、効果的、合理的、能率的に行われているかを監査します。
監査委員は、識見者と議選者で構成されます。識見者とは、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する人のことをいいます。また、議選者とは、議員のうちから選任された人です。 監査委員が監査を実施した場合、監査報告書を作成し、これを議会及び長等に提出し公表しなければなりません。また、この監査報告書に添えて、監査の結果に関する意見も提出することができます。
地方公共団体外部監査制度とは
地方公共団体外部監査制度とは、都道府県や市町村などの地方公共団体が行っている事務を、地方公共団体の組織に属していない外部の専門家(=外部監査人)が監査することをいいます。この外部監査人になれるのは、税理士、弁護士、公認会計士、公務精通者です。
長年、地方公共団体の監査は、地方公共団体の執行機関である監査委員による監査委員監査(内部監査)が実施されていました。
しかし、この監査委員監査は、内部による監査であり、独立性の問題や専門性の問題、不正事件の未然防止ができないことによる機能性の問題について指摘されていました。そこで、平成10年、この問題を解決するため、従来の監査委員の行う監査に加え、外部から監査を行う外部監査制度が導入されました。
地方公共団体における監査制度と税理士
地方公共団体の監査制度の充実・強化については、地方制度調査会「今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申」(平成21年6月)の中で、監査委員の専門性を高めるという見地から、税理士等の専門的有資格者の積極的登用の促進や包括外部監査の監査方法の見直しなどを明記し、地方公共団体の監査制度の充実に積極的に取り組む方向性が示されました。
このような状況に鑑み、日本税理士会連合会及び地域の税理士会では、監査委員制度、外部監査制度双方に対応する研修会を実施するとともに、外部監査人及び監査委員の業務を遂行するにあたり必要不可欠な地方自治制度、地方公共団体等の財務と会計、地方自治における監査制度及び財政健全化法の概要等をテキストとして取りまとめています。
税の専門家である税理士は、健全な地方公共団体の運営、住民の視点に立ったよりよい地域自治に貢献するため、監査委員として、また外部監査人・監査補助者として全国で活躍しています。